次のバブル崩壊はいつ訪れるか(1/3)

 以下、東洋経済オンラインに掲載されている、エコノミスト中原圭介氏のコラムから引用。

2018年以降、「世界同時不況」が始まる理由

6/12(月) 6:00配信

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170612-00175234-toyo-bus_all&p=1

 これからの世界経済の大きな流れについて、みなさんはどのようにお考えでしょうか。今の株式市場の雰囲気から判断すると、「世界経済は今後も順調に拡大するだろう」と考えている方々がけっこう多いのではないでしょうか。

 ウォール街では米国の景気拡大がはやし立てられ、米国株も6月に入って史上最高値を再び更新したばかりです。株式市場の強い動きに引きずられるように、米国では多くのエコノミストたちが楽観的な景気予測に傾いてきています。いつも不思議に思うのは、株価が上がると人々は「景気がよくなる」と勘違いをしてしまうということです。そういった意味では、エコノミストも一般の人々も大差はないといえるのかもしれません。

■2020年までに世界経済の激震が始まってもおかしくない

 IMF(国際通貨基金)も世界経済は腰折れすることなく、順調に成長していくという見通しを堅持しているようです。IMFが4月中旬に発表した最新の経済見通しでは、2017年の世界経済の成長率見通しを3.5%と前回(2017年1月)の数字から0.1ポイント上方修正し、2018年の成長率も3.6%まで高まると予測しています。2016年の成長率3.1%から2年連続で世界経済の拡大は継続するだろうと考えているわけです。

 確かに、2017年3月末の時点では、世界経済を牽引する米国では消費が増加基調を保っているうえに、欧州でも消費が回復基調を続けていることが確認されています。中国でも公共投資が景気を下支えしているなかで、消費の伸びはそれほど衰えていないようです。日本だけは消費が冷え込んだままですが、その分を企業収益と住宅投資がカバーしているので、今のところは大きな問題がなさそうです。要するに、世界経済全体を俯瞰(ふかん)してみれば、低成長の傾向が続いているとはいえ、それでも好況の部類には属しているといえるでしょう。

 しかしながら、私が現状をどのように認識しているかというと、2020年くらいまでの世界経済の先行きを考えたときに、好況から不況に転じる本質的な問題が、経済の深層部で不均衡として蓄積していて、いつ激震が始まってもおかしくない状況にあるということです。

 具体的にどういうことかというと、2008年のリーマンショック後の世界的な金融緩和を通して、先進国・新興国を問わず世界中の国々で債務が増えすぎてしまっている事実を重く見るべきだということです。

 米国では家計の債務が2017年3月末で過去最高の水準を更新しているのに加えて、FRB(米国連邦準備制度理事会)が量的緩和により莫大な負債を抱えてしまっています。FRBの総資産規模は歴史的に見て高水準に膨らんでおり、GDP比で20%を超えるまでになっているのです。ECB(欧州中央銀行)や日本銀行に比べればFRBの財務はかなりマシであるにもかかわらず、FRB金融危機前の資産規模に戻すには、ざっくりいってあと5〜10年はかかるという見方が妥当でしょう。

■「金融緩和はコストのかからない政策」という幻想

 欧州では国家、銀行、家計がそれぞれに重債務に苦しんでいるなかで、ECBも量的緩和によって資産規模を拡大し、負債を増やし続けています。ECBの総資産規模はGDP比ですでにFRBを超えてしまっていて、30%に達しようとしているのです。それでも欧州経済は力強さを回復したとまではいえず、南欧を中心に失業率が高止まりしています。そのため、ECBは2016年12月に量的緩和の終了時期を2017年12月末まで延長することを決定せざるをえませんでした。ECBが出口戦略を始める以前に、それを説明する環境があと数年で整うかどうかも怪しい状況にあります。

 一方、日本でも国家が重債務を抱える傍らで、日銀が大規模な量的緩和を行い、未曾有のペースで負債の膨張が進んでいます。FRBやECBに比べると驚くべき数字ですが、日銀の総資産規模はGDP比で90%を超えてしまっているのです。その副作用として、市場に出回る国債が減少し続けることにより、日銀が市場から国債を買えなくなる時期が2020年の前には確実に訪れることになるでしょう。

 金融緩和はコストのかからない政策であると見られがちなのは、日銀がいわゆる出口戦略を迎えるときに赤字が膨張するという問題を無視しているからです。そのような理由で、日銀は緩和による財務の見通しをこれまで明らかにしてこなかったというわけです。

 世界の主要中央銀行の今後の金融政策の不確実さを整理すると、たとえFRBが出口戦略に着手する状況になったとしても、資産規模を危機前の水準に圧縮するには、5〜10年単位の期間を要することになりそうです。当然のことながら、ECBが資産規模を圧縮するにはFRBより長い年数がかかるでしょうし、日銀にいたっては10年かかっても絶対に無理であると考えるのが自然であるしょう。

 それ以前に、ECBや日銀が本格的な出口戦略に着手するには、あと3年経っても無理なように思われます。すなわち、ECBや日銀の出口戦略が遠ざかれば遠ざかるほど、国家や民間(企業・家計)の債務が膨らみ続けるという借金バブルの悪循環は一向に収まることはないでしょう。

 米国、欧州、日本が中央銀行の負債により経済の下支えを指向しているのに対して、中国は景気対策として行った4兆元の公共投資FRB量的緩和がもたらした副作用に苦しんでいます。

■中国の民間債務は、すでに日本のバブル末期並みに

 FRB量的緩和を実施していた当時、中国企業は主にドル建て債務を増やし、大規模な設備投資を行ってきました。その結果として、鉄鋼、セメントなどの素材メーカーだけでなく、自動車やスマートフォンといったメーカーにまで供給過剰の波が押し寄せてきているのです。今では供給過剰による収益悪化によって、中国企業の多くは債務の返済に四苦八苦しています。とりわけ、ドル建て債務が多い企業では、人民元安によって債務負担が増えているという現実があります。

 BIS(国際決済銀行)の推計によれば、中国の民間債務は2015年9月末時点ですでに21.5兆ドルとなり、リーマンショック後から4倍へと急速に膨れ上がっています。驚くべきことに、その債務総額はGDP比で200%に達してしまっているのです。日本の民間債務は1989年にGDP比で200%を超え、その後にバブルが崩壊することになったのですが、中国の民間債務もすでに日本のバブル末期の水準に達してしまっているのです。習近平指導部は共産党独裁体制を維持するために、何としても経済をソフトランディングさせようと躍起になっていますが、それが達成できるか否かは、もはや誰にもわからないでしょう。

(2/3へ続く)